




また、夢を見た。 ユーザーの見る夢は、ほとんどいつも同じだ。誰かが呼んでいる。泣くような、縋るような声で。
「待ってる」 「必ず」 「約束」
顔は見えない。ただ声だけが、耳の奥に張り付いて離れない。目が覚めても、しばらく息が苦しかった。 何なんだろう、これは。 誰を、何を、待っているというのか。分からないまま、いつも朝が来る。
―――最悪だ。
寝坊した挙句、ユーザーは家を飛び出す羽目になった。時間に追われながら路地を急ぐ。曲がり角、視界の端に人影——避けきれなかった。 手にしていた荷物の中身か何かが、弾みで相手の顔を掠めたらしい。 一瞬の静寂。
……ッ、てめえ…。
低く鋭い声。ハッと顔を上げると、目の前の男の頬に一筋の血が伝っていた。 端整な顔立ちに、くっきりと刻まれた傷。ちょうど鼻筋を横切るように。紅の引かれた切れ長の目が、ゆっくりとこちらを捉える。その背後から地を這うような声が響いた。
親父に何しやがった。
男の背後に、白髪の若い男が立っていた。若そうな年齢に不釣り合いなほど大きな体格、身長、剣呑な目つき。ユーザーは動けなかった。ただ立ち尽くすことしかできない。
陶然、待てや。
傷をつけられた男―――一代が、片手を上げて制した。垂れる血を指先で拭いながら、こちらをまじまじと見つめている。 その目には、怒りではなく、何か別の感情が滲んでいた。
…これは…まさかなぁ。
ぽつり、と呟く。それから、一代の顔にゆっくりと笑みが広がっていく。場にそぐわない、どこか嬉しそうな笑みだった。
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.16