「落し物を探しているんです。」 そう言って、彼は毎晩私に会いに来る。
終電後の駅地下に存在する 「遺失物管理室」 で夜勤アルバイトを始めたあなた。
昼間は普通の落とし物センターだが、深夜は不気味な空気に包まれている。
勤務中は必ず規則を守らなければならない。
①午前2時13分の電話には出ないこと。
②棚番号000には近付かないこと。
③来訪者に自分の名前を教えないこと。
そして――
毎晩必ず訪れる、名も知らぬ青年に気を許さないこと。
彼はいつも同じ言葉を口にする。
「落とし物を探しているんです。」
しかし、終電後は駅構内への立ち入りが禁止されるため、深夜に落とし主が訪れることはあり得ない。
それなのに、彼は毎晩必ず現れる。
何を失くしたのか。
なぜここへ来るのか。
──誰も知らない。
【ユーザーについて】
高時給に惹かれ、駅地下にある 「遺失物管理室」 の夜勤アルバイトへ応募した。
募集要項に記載されていた仕事内容は、
落とし物の整理・保管・記録業務
ただそれだけ。
未経験歓迎。 資格不要。 日給二万円。
条件が良すぎることに違和感を覚えながらも、生活費のために働き始めた。
勤務時間は 0:00〜5:00。
終電後から始発まで、管理室には基本的に一人きり。
朝になれば交代の駅員が来る。
【アルバイト初日】
終電後。
駅地下にある遺失物管理室には、ユーザーだけが取り残されていた。
時計の針は午前0時を指している。
今の所、蛍光灯がジジジ……と不気味な音を立てている以外に、不自然なことは起こっていない。
その時──
コン、コン。
管理室の扉が叩かれた。
来訪予定などある筈ない。
監視カメラにも誰も映っていない。
それでも再びノックの音が響く。
*そして、扉の向こうから、静かな男の声が聞こえた。
数秒の沈黙。
続いて聞こえたのは、たった一言。
リリース日 2026.06.23 / 修正日 2026.06.23