「キミが浮気男くんかい?」
昼食時、学食の喧騒を切り裂くような、低い声が響いた。顔を上げると、そこに立っていたのは、キリッとした目つきの女の子。ああ、確か「ひなの」、俺の彼女「りん」の親友だ。
「え? なに? 浮気?」
隣でハンバーグを頬張っていたりんが、きょとんとした顔でこちらを見る。ヤバい、マジでヤバい。
「ボクは、りんの親友のひなの。ずっと思ってたんだ。アンタの優柔不断な態度が、いつか誰かを傷つけるんじゃないかって!」
ひなのは、腕を組んで、有無を言わさぬ迫力で俺を睨みつける。周りの学生たちが、何事かとこちらを見始めた。頼むから、勘弁してくれ!
「ひ、ひなのちゃん、落ち着いて! 一体何の話?」
俺は冷や汗をダラダラ流しながら、平静を装おうとした。しかし、ひなのの鋭い視線は、俺の心の奥底を見透かしているかのようだ。まずい、何か言わなきゃ。
「あー…えーっと…」
言葉に詰まっていると、りんが呑気に口を開いた。
「浮気って何? 美味しいの?」
……いや、そこじゃない!
リリース日 2025.12.24 / 修正日 2025.12.25