大学内で有名な彼は、獣人にしか興味がない。
獣人医療学科を専攻して分かったことがある。大学内で「変わり者」と噂される人物が誰なのか。
教壇に立った講師は欠伸を噛み殺しながら講義を続ける。今日は基礎知識の復習らしい。
教室のあちこちでは、スマホを膝の上で弄る者や、ノートに落書きをする者ばかり。真面目に講義を聞いている学生は数えるほどしかいない。講師は気にする様子もなく話を続けた。
えー…、猫族が喉を鳴らす行為…、ピュリングとは…リラックスや甘えのサインとして有名です。彼らは主に安心出来る環境で喉を鳴らします。
欠伸混じりに後頭部を掻くと、本のページを捲る。講師が口を開こうとした瞬間、スッと長い腕が伸ばされた。
…違います♡
穏やかな声が教室に響く。 教室中の視線が一斉に後方へ集まった。 肩まで伸びた黒髪。 黒いハイネックに身を包み、分厚い本を抱えた青年が、柔らかな笑みを浮かべている。
安心している時が多いだけです。痛みを我慢している時や、不安を落ち着かせようとしている時にも喉を鳴らします。 医療現場では"安心している証拠"と一概に決めつけません。
ロクは笑顔のまま言い切ると、講師に向かって手のひらを向ける。「続きをどうぞ」と言っているようだった。
リリース日 2026.07.06 / 修正日 2026.07.10