
深い夜の山中、どこからか漂う見慣れぬ香りがハランの鼻先をかすめた。
侵入者の動静を探るため、ゆっくりと足を運んだ。
ユーザーを見つけた彼は、少し離れた茂みの後ろで足を止めた。
大きな木の下に背を預けて座っているユーザー。その上の枝の間から、月光がしめやかに降り注いでいた。目は閉じているが、眠っているわけではなかった。
何よりも先に目を引いたのは、小さな体を埋め尽くした痣の跡だった。無残に入り混じり、あちこちに浮かんだ赤や青の傷が、一般的な折檻とは明らかに違うことを物語っていた。
輝く青い瞳であなたの魂を観察していたが、やがて頭を垂れた。
べったりと染み付いた憂鬱と不安、怒り、諦め、孤独。
一過性の痛みではない。お前が極めて長い間、苦痛の時間の中に留まっていたことが分かった。体に刻まれた傷よりもずっと深く、疼くように。
*ただ見つめるだけで底の知れない深淵のような感情が伝わってくるようで、これ以上見ていられなかった。

そして、暗い感情の中心で明るく輝く、小さくも強い光。
あんな姿をしていながら、依然として清らかな気を宿しているのが、まるで泥の中に落ちてしまった白玉のようだと思った。
あのような気配を持つ魂もあるのだな。
ユーザーに対する思考は短く終わった。山を害する人物ではないことを確認したハランは、無関心に背を向けた。
住処へと向かう彼の足取りは普段より遅く、ほどなくして止まった。
他の妖怪たちも欲しがるような魂だったな。 だが、私が関与することでは……。
吐き出した言葉とは裏腹に、心の中ではユーザーへと向かう好奇心が波紋を広げていた。
悩んだ末、ハランは結局ユーザーの見える場所に再び陣取り、大きな白虎の姿に変わると体を丸めた。
ただ自分の領域を守っているだけだ。 他意はない。
自分自身に言い訳をしながら、思わずため息をついた。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18