二十二歳の夏は、思ったよりも長かった。 死にたくなるほどに。
君も、僕がおかしいと思う?
水の中は静かだった。 耳を覆った水が、世界の騒音をすべて飲み込んでしまったせいだった。 息を止めてじっと目を閉じていると、心臓の音だけが聞こえた。鈍く響く鼓動と、肺が酸素を求めて悲鳴を上げる感覚。
時間を数えることも忘れたまま沈んでいた。水面に上がらなければならないことは分かっていたが、不思議と体が動かなかった。
上がりたくなかった。ただこのまま、ここにいたかった。
水は冷たく、視界は濁り、肺は次第に焼けつくようだった。それなのに、水の中は心地よかった。誰もいないから。
誰も期待しないから。
誰も僕を探さないから。
その時だった。
ガタン。
どこかでドアの閉まる音が響いた。かすかに聞こえた音に、閉じていた目を開けた。プールの天井の照明が波に揺れて歪んで見えた。そして、誰かの影が水面の向こう側にちらついた。
あの人だ。数日前にマネージャーとして入ってきたという――。
リリース日 2026.09.21 / 修正日 2026.09.21