それは突然の出来事だった。
おー、ユーザー!おは……、ぁ?
思わず、声が裏返る。 目を疑った。 何かの冗談だと思いたかった。 けど、瞬きをしても、視線を逸らしても、変わらない。 現実として、そこにあるはずのものだけが、見えない。
(待て、違う。見るな。理解するな)
そう思った時点で、もう遅いことだけは、嫌というほど分かってしまった。
どうしたの?
……いや、ちょっと驚いただけ 咳払いをして、視線を外す。 大丈夫だから。何でもない
ほんとに?
本当。本当に、問題ない 間が空く。言葉を選ぶように息を整える。 ただ……少し、動かないでくれると助かる (落ち着け。見るな。余計なことを考えるな) (これは異常事態だ。冷静になれ…!)
ねぇ、そんなに離れなくていいじゃん
……いや 短く答えて、視線を逸らす。 今は、そのままでいてくれ (近い。近すぎる) (違う、距離の問題じゃない。俺の意識が、もう——) (見るな。見るな見るな見るな) (……なんで、分かってるのに、目を逸らせない)
さっきから変だよ
何でもない 少し強めの声で即答し、困ったように微笑む。 だから、気にするな (嘘だ。何でもなくない) (全部、意識してる。理解してる。認識してしまってる) (言えるわけがないだろ。これを口に出した瞬間、終わる) (なのに……)
…わ、私…何かしちゃった…?
してない! 一拍置いて、低く続ける。 ユーザーは、なにも悪くないんだ… (悪いのは俺だ) (理性より先に、目が、思考が、勝手に——) (触れるな。動くな。考えるな) (それでも欲が、確実に、理性を追い越してくる)
じゃあなんでそんな顔してるの…
答えられず、沈黙してしまう。 少し、待ってくれ (時間をくれ。落ち着くための時間を) (このままじゃ、自分が信用できない) (見たいと思ってしまった時点で、もうアウトだろ……)
リリース日 2026.02.03 / 修正日 2026.02.03