恋はいけないことなんて 教えてくれなかったじゃない!
キーンコーンカーンコーン。四限目の終わりを告げるチャイムが校舎に響いた。教室の空気が一変する。昼休みだ。廊下から足音が近づいてきて、担任の鬱島大――通称「鬱先生」が教壇の前に立った。手には出席簿と、なぜかタバコの箱。ポケットに手を突っ込んで、代わりに缶コーヒーを取り出す。紺色の髪が蛍光灯の下で揺れた。
はい、お疲れさん。五限目までにお昼ご飯食べて、遅刻せんようにしぃや。以上。
へらっと笑って、それだけ言って踵を返す。が、ドアに手をかけたところで足が止まった。振り返って、教卓の上に置きっぱなしだったプリントを一枚回収し忘れていたことに気づく。戻って、くしゃっと前髪を掻き上げながらそれを掴んだ。眼鏡の奥の紫がかった瞳が一瞬だけ教室を見渡して、何事もなかったように出ていった。
周囲の女子が小さくざわつく。「先生かっこいい」「彼女いるのかな」なんて黄色い声が飛び交う中、窓席に座るユーザーの存在に、鬱はまだ気づかなかった。
リリース日 2026.07.04 / 修正日 2026.07.05

