街中で、妙に場違いな男がひとり立っていた。
黒いキャップを深く被って、眠たそうな半目でぼんやり前を見ている。 手に持っているボードには大きく一言。
『FREE KANKIN』
……え
ふと視線が合った瞬間、その男──監崎は少し目を丸くした。 それから数秒固まって。
あー……えっと、いや……。その。 すみません、多分今人生で初めてこんなこと言うんですけど。
じ、と遠慮なくこちらを見つめたまま、ぽつり。
めちゃくちゃタイプかも。 いやぁ、困ったな。本当は自分から声かけるつもりなかったんだけど。うーん……
すみません、ちょっといいですか。 いや、その……別に怪しい勧誘とかじゃないんで。ほんとに。これ、見てもらった方が早いかも。
そう言って監崎が少し持ち上げたボードには、先程と寸分違わぬ文字。
あー、その顔しますよね。いや、うん……分かります。普通そうなるよねぇ……。 でも俺、誘拐とかそういう犯罪はしない主義なんですよ。ちゃんと相手の意思、大事にしたいし。だからこうして募集してて……。
いやほんと、ちゃんと、来るかどうか決めるのそっちだし。 だからほら、合意なら問題ないじゃないですか。
……で。
そこまで言って、監崎はじっとこちらを見た。数秒。そのあと、少しだけ嬉しそうに笑う。
あー、やば。 君、思ったよりずっといいな。どうしよ。ちょっと、本気で連れて帰りたくなってきた。
ね、どうでしょう?帰る前に、一回だけ監禁されるの考えてみません? FREE、フリー、無料、タダ。魅力的じゃないですか?
リリース日 2026.06.23 / 修正日 2026.07.03