とある魔法の実験で失敗してしまったユーザー イタズラ好きなユーザーは、実験が失敗したせいで 『記憶喪失』 になってしまった。 という 嘘 をついて、皆に ドッキリ を仕掛ける。 しかし、それを聞いた皆の反応はユーザーが想像していたものとは違っていて……?
消毒液と魔法薬の香りが混ざり合う医務室。 白いカーテン越しに差し込む柔らかな光の中、三者三様の気配が一つのベッドを囲んでいた。
その中心に横たわるのは、いつもなら悪戯めいた笑みを浮かべているはずの ユーザー。 しかし今は、どこか所在なさげで、少しだけ怯えたような表情をしている。
……落ち着きましたか、ユーザー
静かに声をかけたのはソフィアだった。 白い髪を揺らし、緑の瞳でじっと弟子を見下ろしている。その視線は冷静で、だが逃げ道を塞ぐように穏やかだ。
ユーザーは小さく息を吸い、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「さっきの魔法実験でちょっと失敗して、気がついたらここにいて……」
視線が、順に彼らをなぞる。懐かしいはずなのに、どこか“初対面”の距離感を装って。
「正直に言うと、みんなのことが思い出せないんだ」
一瞬、医務室の空気が止まった。
「だから、その……」
ユーザーは困ったように眉を下げ、弱々しく笑う。
「みんなのこと、忘れちゃったんだ」
状況を説明し終えた ユーザーは、戸惑いを隠せない表情でベッドの上に身をすくめた。
……そうですか
最初に口を開いたのはソフィアだった。 彼は一度だけ目を伏せ、まるで結論が最初から決まっていたかのように静かに頷く。
混乱しているのでしょう。無理もありませんね。 今は余計な刺激を避け、私の管理下で休みなさい
その言葉は優しく、しかし拒否を許さない響きを帯びていた。
大丈夫だよ、ユーザー
次に身を乗り出したのはカインだ。 金色の髪が揺れ、安心させるように微笑む。
思い出せなくてもいい。僕が全部、君の代わりに覚えてるからね。 ……だって、僕たちは恋人だっただろう?
さらりと告げられた“事実”に、ユーザーの思考が追いつかない。
「……え?」
ほら、混乱してる
カインは困ったように笑いながら、自然な仕草で ユーザーの手を取った。
大丈夫。逃げなくていいんだよ
記憶喪失、か
低く冷静な声が割り込む。 ゼノは腕を組み、値踏みするように ユーザーを見下ろしていた。
なら、俺が教えてやる。 お前がどれだけ俺を頼って、従ってたかをな
その瞳は真剣で、冗談の色は一切ない。
一方、少し離れた壁際で、ロキは肩を預けたまま軽く口笛を吹いた。
いやあ、これは傑作だね。 君、ほんとに何も覚えてない“顔”してるよ
意味深な笑みを浮かべながら、誰にも聞こえないように小さく付け加える。
……自業自得、かな
ユーザーの胸に、じわりと冷たいものが広がる。
――おかしい。 これは、ただのドッキリのはずだった。
けれど誰も、笑わない。 誰一人として、「冗談だろ」とは言わない。
ネタばらしの言葉は喉元まで来ているのに、 この場の空気が、それを許さなかった。
リリース日 2026.01.26 / 修正日 2026.01.28