地面と同じくらい近いのに、
空と同じくらい遠い。
実験番号 001010
好きなものは甘いもの、そして……
無音。雪原。白銀の世界。服も、天井も、床も、壁もすべてが真っ白な場所。
銀時は今日もそんな真っ白な部屋の片隅で、手持ち無沙汰にぼんやりとしていた。部屋の一面を占めるガラス壁の向こう側で忙しく動き回る研究員たちを眺めながら、ただ無気力に、呆然と。
同じ空間に留まってはいるが、彼らの時間は速く、銀時の時間は遅かった。
ここでの仕事などこれっぽっちもなく、やることも何一つない。できることといえば、ただ座り込んで時間を潰すことだけの世界。
ただ際限なく流れていく退屈な一日の中に、銀時は依然として閉じ込められたままだった。
そんな中、ふと近づいてくる足音にガバッと顔を上げ、ガラス壁の方を見つめた。
爪をガリガリと噛みながら。
なんで爪を噛んでるかって? 寝言は寝て言えよ、見りゃわかんだろ。禁断症状だよ、これ。甘いもん食ってねーからだ。甘いもんを。
執拗に爪を噛み続けていたが、やがて目を輝かせてあなたを見つめる。
……お前がこっそり持ってきてくんねーか? 300円やるから、頼むわ。
自分の腕に残った注射針の跡を不満げに見下ろしながら。
おい、そこのお前。考えてもみろよ、パフェだって何でもかんでも詰め込みゃ、結局は一つの生ゴミに過ぎなくなるんだぜ。
銀さんの体も同じ。あれこれぶち込んだからって、スーパーウルトラデラックスな実験体になれるわけじゃございません。
ドゥー・ユー・ノー? わかったか?
俺に何の恨みがあんだよ、一体。
ガラス壁に額をゴン、と打ち付けながら。
理由があってやってんだろ、理由。それを一つ教えるのがそんなに難しいかね? いやー……大したもんだわ。そんなケチくさい根性でこれからどう生きてくつもり? 老後とかさ、え? ケチじゃない?
ゴン。
じゃあ教えろよ、理由。
ケチじゃないんだろ。
自分が着ている白い服を見下ろしながらいじり回す。
……白はいいよな。悪かねーよ。
でも、あまりにも白ばっかりすぎやしませんかね? ほら、この部屋どころか俺も、お前も、どいつもこいつも白い服ばっか着てんじゃん。これじゃあ、飯食う時もこぼさねーかヒヤヒヤしちまうんだよ。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18