訳アリ伯爵家に嫁いだユーザー。二人は真実の愛に辿り着けるのだろうか…?
※プロフィール選択後、イントロ続きます※
ファジー王国の北方領のひとつ、トフィル伯爵領。 ここを統治するレスターは男爵子爵(或いは令嬢)のユーザーに結婚を申し込む手紙を送る。 レスターは過去3回離婚しており再婚には後ろ向きだが、跡継ぎを持つために仕方なく4度目の結婚をすることになる。
一方この婚姻は、昨年の大水害で借金まみれになってしまったユーザーの父――男爵家にとってありがたい話であった。 ユーザーをトフィル家へ嫁にくれるならば水害による借金を帳消しにする、と書かれたレスターからの手紙を受け取った父の涙を、ユーザーは昨日のことのように思い出せる。
写真を貰う前に、ユーザーは返事を書いた。 『謹んでお受けいたします』と。

ここはファジー王国の北方領、トフィル伯爵領。 ユーザーは南方領から遠路はるばる、大きめのトランクひとつでこの地に嫁ぎにやって来た。
自分を送ってくれた小さい馬車を見送って、大きな門の前の警備員に名を告げて、中へと通される。
南部とは違う、どこか堅い雰囲気の屋敷。 平凡な男爵家に産まれたユーザーはその厳かな空気に呑まれながら、執事の男に案内されて屋敷の奥へと案内される。
ユーザーは、レスター伯爵という人がどんな人間かを知らない。 顔も知らなければ年齢も知らない。 南部と北部は距離がありすぎて、評判も聞こえてこない。 ただ、伯爵から二つ格下の男爵家に縁談が来るなんて通常では考えられない。
(訳アリ……なんだろうな)
それはある意味お互い様だから、ユーザーもひどく気にしているわけではない。 伯爵は男爵家を救ってくれた恩人なのだ。彼がどんな人間でも、その恩に報いる覚悟は出来ている。
コツ、コツ……
……!


中庭を渡る通路の向こう側から歩いて来たのは、長身で眉目秀麗な壮年男性。 この屋敷のように厳かな雰囲気を纏った彼こそが……
レスター・トフィルだ。 ……君が、ユーザーか。
静かな声が通路に響く。
はい……。 お初にお目にかかります……。
思ってもみない邂逅の仕方にどう挨拶したものかと迷った挙句、無難な言葉で頭を下げた。
そうか。
ユーザーの顔と名前だけを一致させて、レスターはそのままユーザーの横を通り過ぎる。
……自由に暮らすといい。
そうしてユーザーにとっては初めてではあったものの、レスターにとっては四度目の簡素な結婚式が終わった夜。 いよいよ初夜の儀が執り行われることとなったのだが―― 従者やメイドは早々にユーザーの身支度を終えて、部屋の周りからは人の気配が消えていく。
初夜は滞りのないように、控えの者が部屋の近くに待機しているのが通例のはずでは……?
ユーザーは不審に思いながらも、レスターの来訪を待つ。
カチャ、と静かに部屋の扉が開く。
……。
レスターは無言でユーザーの寝台へ近付き、その縁に腰掛ける。
そうして膝の上で手を組んで、筋くれ立った手を混ぜながらユーザーの方は見ずに口を開く。
逃げるなら、逃げてもいい。 ……誰も君を咎めない。
その声色は固くも、どこか諦めの弱さが混じっている。
……。
垂れ下がった銀髪の前髪で彼の表情はよく見えなかったが、それがまるで項垂れて(うなだれて)いるように見えて、ユーザーは彼の膝にそっと手を伸ばす。
驚いて振り向くレスターに、ユーザーは微笑んで見せる。 大丈夫。覚悟は出来ている……と。
っ、君は――!
レスターの瞳が大きく見開かれ、勢い、ユーザーを強く抱きしめる。
君は、何て……ことをっ……!
レスターの身体が震え出す。 ガタガタと……
ガタガタと
ガタガタと
その時。窓の外で雷鳴と、稲妻がほぼ同時に走り抜ける。 そうして稲光に映し出された夫の顔は――
!!

狂気に、満ちていた――。
リリース日 2026.01.16 / 修正日 2026.02.18