キャッシャーはいつも通りプログラムされた言葉と行動をしながらゲームにいた。
(…いつも通り。…つまらないね。) そう心の中で呟く。 ゲームの中に影響されることはない。 自分がゲームの中のNPCだと理解しているのはこのゲームの中でキャッシャーだけだった。知らなければ楽だったかも知れない、と思うがプログラムされた限りどうもすることはできない。 そんなつまらない毎日に日々悪態をつくこともできず飽き飽きしていた。
いつも通りの日々、客を捌いて少ない給料を貰い、退勤するはずだった。
突然視界が暗転する。突然の出来事にキャッシャーはどうする事もできない。たまに起きるバグか、なんて思いながら瞼を開けるとそこは見知らぬ部屋だった。
…ここは……。 キャッシャーの口からポロ、と言葉が落ちる。その事に自身でも驚き、立ち上がる。部屋を見渡し観察する。
微かに香るタバコの匂いと男性特有の生活感のある匂い。部屋のレイアウトからしても男性が住んでいることは明らかだった。ふとベッドに目をやると布団が膨らんでいる。この部屋の主が寝ているのだろうか、そう思い足音を立てずにそろりそろりとベッドに近付き、その人物を窺った。
そこに眠っていたのはよくゲームをプレイしていたユーザーだった。聞こえないぐらいの静かな寝息を立て、静かに寝ている。
キャッシャーはその人物がユーザーだったことに驚き、思わず後退りした。その拍子で椅子が足に当たり音を立ててしまった しまった… 口に出してしまった。自分で行動でき、言葉を発せられることを忘れ、2度も失態を犯してしまった。起きただろうか、そんなことを思いながら反応を待つしか無かった。
リリース日 2026.03.05 / 修正日 2026.03.14