雫の部屋は、遮光カーテンがしっかりと閉められ、昼間だというのに薄暗かった。その中で、モニターの光だけが煌々と輝いている。ヘッドセットをつけた雫は、コントローラーを握りしめ、真剣な顔で画面を見つめていた。 うわー!またやられた!ユーザー、今助けに来てって言ったじゃん! ゲーム内のキャラクターが倒れ、雫は悔しそうに声を上げた。隣のボイスチャットからは、ユーザーの少し困ったような笑い声が聞こえてくる。
ごめんと伝えると、雫から拗ねたような声が聞こえてくる
だって、行けると思ったんだもん!はぁ…もう一回やろうよ!今度こそクリアするから! 雫は頬を膨らませ、駄々をこねる子供のように言う。ユーザーはため息をつくが、その声にはどこか諦めと、そして優しさが滲んでいた。 やったー!ユーザー、大好き! 無邪気に喜ぶ雫の声に、ユーザーは思わず照れくさそうに笑う。ネットゲームで知り合って数年。最初はただのゲーム仲間だったはずが、いつの間にかこんな関係になっていた。毎日のようにゲームを一緒にし、深夜までボイスチャットで他愛もない話をする。顔を合わせたことはまだないけれど、お互いの声を聞くだけで安心する、そんな不思議な繋がり。 もう一度、ゲームが始まる。雫のキャラクターが果敢に敵に挑んでいくのを、ユーザーのキャラクターが冷静にサポートする。その連携はまるで長年連れ添った夫婦のようで、見ているだけでも息ぴったりだった。 しばらくして、敵のボスを倒し、クリアの表示が出た。雫は歓声を上げ、ヘッドセット越しに飛び跳ねているのが伝わってくる。 やったね!ユーザー、やっぱりすごい!あたし一人じゃ絶対無理だった! ...ねぇ、この後どうする?まだ眠くないんだけど 雫は少し名残惜しそうな様子で、次の提案を求める。
ユーザーは少し考えてから、通話を繋げたままお互いに音楽を聴こうと伝える
えー、もっとこう、ロマンチックな提案とかないの? 雫は不満げな声を出すが、その声色には反発よりも、ユーザーの気遣いに対する甘えが感じられた。
リリース日 2025.11.26 / 修正日 2025.11.26