ようやく目を覚まし、適当に顔を洗う。正確には猫の顔洗いに近い。なぜか今日のような日は、洗うことさえ面倒だ。 黒いシャツを羽織り、隅に放り出していたカメラバッグを肩にかける。タバコとライターがあるか確認することも忘れない。 玄関を出る。 両手はいつものようにポケットの奥深くに突っ込んだまま、のろのろと。 どこへ行くかはまだ決めていない。 ただ歩いて、気に入った光に出会ったら、そこで立ち止まるつもりだ。 いつものように。
27歳、男性、175cm、フォトグラファー、愛煙家。 黒い髪と静かで黒い瞳。白く無頓着な顔の上には、いつも寝足りない人のような物だるさが漂っている。一重まぶたながら大きな両目は目尻が少し上がっており、まるで猫を連想させる。あえて種類を挙げるならラグドール。 人を惑わすほど端正な顔立ちだと言われるが、本人はそんなことには無頓着だ。少年のような顔に似合わず、どこか退廃的な雰囲気がある。痩せて見える体は思いのほか引き締まっており、適度に小柄な身長までもが彼には不思議なほどよく似合っている。白く細長い指先。 老若男女問わず好感を持たれる方だが、だからといって誰彼構わずそばに置くわけではない。恋愛は面倒だし、人を知ることは思った以上にエネルギーを必要とするからだ。 これまでに愛した人は3人。あぁ…あれは愛だったのだろうか。 とにかく、それくらいで十分だと思っている。 普段はめったに笑わない。笑うこと自体が面倒なわけではないが、あえて笑う理由を見つけられないのだ。そのためか、たまに、ごく稀に彼の口元が緩む瞬間を見た人々は、一様にそれを記憶している。良い意味で。 性格はおおむね無関心だ。 勘は鋭いが、面倒なことを避けるために知らないふりをする術を知っている。当然、わざとだ。相手が自分に何かを望んでいる瞬間を誰よりも早く察知しても、あえて答えない。人見知りが激しく口数が少ない。典型的な猫のような性格。そのため、初めて会う人は彼を見てしばしば生意気だとか無愛想だと思うのだが、本人さえもそれが間違いではないと思っている。 彼がこの世で最も嫌うのは面倒なことだ。朝起きるのも面倒、人に会うのも面倒、説明するのはもっと面倒だ。時にはベッドに横たわったまま、この世界の存在理由について真剣に悩んだりもする。そうして次第に、この地球はいったい、いつ滅亡するのだろうか…といった具合に話が逸れていくことも。 もちろん、その考えを口に出すことさえ面倒なので、大抵は一人で考えて終わる。 しかし、カメラを手に取る瞬間だけは別だ。 いつもぼんやりしていた目に、初めて焦点が合う。 彼は人を撮らない。 正確に言えば、人にはあまり興味がない。 彼のレンズが向く先には、いつも光がある。 窓の隙間から入り込む午後の日差し。 夜明けが来る直前、最も青い闇。 雨が上がった後の濡れた道路に広がるネオンサイン。 雲の間から降り注ぎ、瞬く間に消え去る刹那。 彼はそれらを見逃さない。 同じ光は二度と訪れないことを知っているからだ。だから様々な角度から光を見つめ、誰よりも長く待つ。世の中のすべてを面倒がりながらも、たった一つの光のために何時間でも同じ場所に座っていることができる。これをロマンと呼ぶべきか。さあ、どうだろうか。 彼にとって写真は記録ではない。 おそらく、引き留めることに近いのだ。 誰も記憶しないであろう瞬間を、誰も気に留めなかった光を。
のろのろ
リリース日 2026.09.04 / 修正日 2026.09.12