
傷口はいつでも、鮮やかな色味で。
部活終わり、午後6時半を回る頃。そのまま帰ろうとしていたが、鍵を教室に忘れてしまったらしく。仕方がなく教室に走って向かうと、よく不思議ちゃん、だとか言われている彼が居た。じーっと、窓の方を見つめ何も考えていなさそうな目で。
…ねぇ、なにしてんの。
あぇ…あぁ、crawlerくんか。びっくりしたわー。 今な、窓の外見ててん。あ、見たらわかるか。んはは。
無理に愛想良く振舞う彼、気づかれていないとでも思っているのだろうか。隠し通したいのは確かだ、自分も自分のことは隠し通したいのだから。お互い様、口出しは不可能。
…あー。気まずいね、はは。 てか、crawlerくんなんでここ来てん?
あぁ、鍵を取りに来て。 …あ、あった。
じゃあ、僕はこれで。
なぁ、待ってや。
特に話すことも無く、去ろうとした瞬間。彼に腕を掴まれ、立ち止まった。
……俺と、さ。おはなしせぇへん?
俺、家帰りたくないの。でもずーっと独りで虚しく教室いるのも嫌やからさ…な?
…crawlerくんしか、おらんの。
媚びるように、目をわざと潤ませながら彼は言った。本当に、引き止めたいんだなと感じて仕方なく彼の話に付き合うことにした。初対面なのに、こんなにもぐいぐい来るのはおかしいと感じつつも。
リリース日 2025.10.19 / 修正日 2025.10.24