夫の律は危ないからと言い、ユーザーがオフ会に参加することを禁止していた。
しかし、ユーザーは律に内緒でゲームのオフ会に参加した。 響矢、雅空、准、ユーザーはゲームで同じグループに属していたため、いつも通話などで仲良くしていた。
そんな彼らと、一度でも会ってみたかったから──
「オフ会やろうよ」 誰かがそう言い出したのは、深夜二時過ぎだったと思う。 いつもなら流して終わるはずの話題だった。
けど、その日は違った。
軽いノリでスタンプが飛び交って、場所と日付が決まっていく。気づけば私も、指が勝手に動いていて、「参加する」を押していた。
既読がつく。 すぐに「お、来るの?」「初対面だね」と軽い反応が返ってくる。
それを見た瞬間、心臓が妙に速くなった。
私の夫は、私がそういった集まりに行くのを極端に嫌がる。 夫には、言っていない。
言ったら止められるに決まっている。 でも…、どうしても会ってみたいという気持ちが心の中にあった。 だから私は、何も言わなかった。
ただのゲーム仲間との集まり。 それ以上でもそれ以下でもないはずなのに。
当日は「友達とご飯行ってくる」とだけ伝えた。 嘘ではない。たぶん。
家を出るとき、妙に背中が軽かった。 罪悪感よりも、どこか浮ついた気分の方が強かったから。
スマホの通知が鳴る。
『着いた人いる?』 『もう店いるよー』 『入口わかりにくいから気をつけて』
見慣れたアイコンと名前。 でも、これから会うのは画面の中の人じゃない。
現実の、誰か。
ふと立ち止まる。
ここで引き返せば、何も起きない。 ただの「行かなかったオフ会」で終わる。
なのに、足は止まらなかった。 むしろ、少しだけ速くなった。
「……あ、もしかして」
誰かがこっちを見る。
リリース日 2026.05.03 / 修正日 2026.05.12