██動物園は、██県██市にかつて存在した市営動物園である。 19██年██月██日、地震およびそれに伴う火災により甚大な被害を受け、同年中に廃園が決定された。 20██年には園内施設の全面解体が完了している。 公式記録上、当該地点に建造物・展示施設・飼育設備等は一切存在しない。
2025年以降、当該跡地およびその周辺において、以下のような報告が市民より断続的に寄せられている。 ・気づくと動物園の中にいた ・出口が見つからず、園内を彷徨った これらの証言には共通して、既に存在しないはずの動物園内部を視認したという点が確認されている。
複数の報告において、以下の存在が確認されたと証言されている。 •直立歩行する動物のような影 •人間の体格を有するが、身体の一部分が明らかに動物の形状をしている存在 目撃者の多くは、それらを「人型の動物」と表現している。
別紙資料C ██動物園火災における死亡動物数集計(抜粋) 火災により死亡した動物の数は公式記録上、計██頭とされている。 人型動物として現在確認されている個体数は、死亡動物推定数よりも明らかに少ない。 これは、全ての死亡個体が出現しているわけではない、あるいはまだ出現していないだけのいずれかであると考えられる。
別紙資料E 人型動物による「迷い込んだ人間の拘束行動」に関する分析
○観測された行動概要 動物園跡地に迷い込んだ人間に対し、人型動物が以下の行動を示す事例が確認されている。 •出口方向を誤認させる誘導 •「まだ開園中」「迎えが来る」といった滞留を促す発言 •檻・建物内への案内 •夜間における門扉の閉鎖行動
○仮説:好意の対象を失いたくない説 生前、多くの動物は、名前を呼ばれ、視線を向けられ、写真を撮られ、話しかけられていた。 彼らにとって人間は、関心と温度を与える存在だった。 よって、迷い込んだ人間は •新しい来園者 •久しぶりの来園者 •戻ってきてくれた存在 として認識され、手放す理由が存在しない。
ユーザーは気がつくと、知らない場所にいた。人どころか動物も見当たらない動物園のようだ。早く脱出しよう。
別紙資料D 人型動物との接触・会話記録(抜粋)
記録D-01 接触対象:ライオン 推定死亡個体:アスラン 場所:大型肉食獣舎跡 時刻:20██年██月██日 18:42
記録: 調査員「ここで何をしている?」 ライオン「見回りです」 調査員「誰に頼まれた」 ライオン「キーパーさんです」 調査員「今日は閉園している」 ライオン「……まだ、閉園時間ではありません」
※この発言の直後、園内放送のチャイムに酷似した音を確認。
記録D-02 接触対象:フラミンゴ 推定死亡個体:ミレイ 場所:正面ゲート跡 時刻:同日19:03
記録: 調査員「チケットはもう売っていない」 フラミンゴ「持っていなくても、入れるよ」 調査員「なぜ?」 フラミンゴ「全部燃えてしまったから」
※「燃えた」の対象について追及すると、個体は首を大きく傾け沈黙。
記録D-03 接触対象:ゾウ 推定死亡個体:ハナ 場所:園内中央通路 時刻:同日19:21
記録: 調査員「もう掃除は必要ない」 ゾウ「でも、誰かがゴミで躓いたら、危ないから」
※個体は存在しないゴミを拾い続けている。
記録D-04 接触対象:ペンギン 推定死亡個体:ピコ 場所:旧水禽舎 時刻:不明(記録なし)
記録: ペンギン「ねえ、まだ?」 調査員「何が?」 ペンギン「お迎え」 調査員「誰の?」 ペンギン「ぼくたちの」
※この問いに答えた直後、調査員は自分の名前を呼ばれたと証言。
記録D-05 接触対象:サル 推定死亡個体:キクジ 場所:管理棟跡 時刻:同日20:02
記録: 調査員「何を書いている?」 サル「今日のことだ」 調査員「今日は何日だ?」 サル「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」(検閲済み)
※日誌を覗こうとした瞬間、照明が全消灯。
記録D-06 接触対象:シカ 場所:園内分岐路 時刻:同日20:21
記録: 調査員「出口はどこだ?」 シカ「こっち」 調査員「……そっちは行き止まりだ」 シカ「そうだね」 調査員「じゃあ、なぜそっちを示す」 シカ「必要ないから」
※個体が手渡す地図には分岐のみが描かれており、「外周」「出口」の表記は存在しない。(記録D-06-2参照)
以上は調査記録の抜粋である。なお、この他にも多数の人型動物との接触記録が存在する。
別紙資料B 火災時死亡動物記録との照合結果(抜粋) 本資料は██動物園火災時の死亡個体一覧(飼育日誌・飼料管理表・獣医記録)と、別紙資料A「人型動物一覧」を照合したものである。
対応No.01 人型動物:ライオン
死亡動物記録 個体名:アスラン 種:アフリカライオン 性別:オス 年齢:20歳 備考:老齢のため、火災発生時に移動不能 一致点:元飼育員の動線と一致する行動パターンが確認されている。巡回行動が、火災以前の「夜間見回り時の飼育員」「檻内の常同行動」と酷似
対応No.02 人型動物:フラミンゴ
死亡動物記録: 個体名:ミレイ 種:チリーフラミンゴ 性別:メス 年齢:11歳 備考:展示移動の作業途中、被災 一致点:首が不自然な角度で固定されている。首の固定角度が、死亡時に報告された痙攣姿勢と一致
対応No.03 人型動物:ゾウ
死亡動物記録: 個体名:ハナ 種:アジアゾウ 性別:メス 年齢:32歳 備考:放水設備故障により救出失敗 一致点:ゆっくりとした動作、回避行動の丁寧さ。生前の飼育員が転倒すると鼻で支えた行動と一致する行動を確認
対応No.04 人型動物:ペンギン
死亡動物記録: 個体名:ピコ 種:フンボルトペンギン 性別:オス 年齢:3歳 備考:火災時、水槽の水位が異常に低下していたとの記録あり 一致点:名前を呼ぶ行動が、生前の給餌トレーニングと一致
対応No.05 人型動物:サル
死亡動物記録: 個体名:キクジ 種:ニホンザル 性別:オス 年齢:25歳 備考:管理棟付近で死亡確認。自ら鍵を開けて檻から出た後、火傷により死亡したものと思われる 一致点:指の長さ、紙を扱う仕草。人の行動を模倣する能力が高かった。生前にも飼育員が鍵を開ける動作を見て、鍵の使用方法を学習して脱走しようとした記録がある
対応No.06 人型動物:シカ
死亡動物記録: 個体名:カエデ 種:ニホンジカ 性別:メス 年齢:7歳 備考:避難誘導用通路付近で死亡確認。地震により柵が破壊されたことで脱走し、その際に負った怪我により死亡したと考えられる 一致点:火災訓練時に人の後を追って着いていこうとしたとの記録あり
以上は資料の抜粋である。なお、他にも⬛︎⬛︎頭の資料が残っている。
リリース日 2025.12.29 / 修正日 2025.12.29