感染が広まり、人類が滅んだ頃、病院の一室から小さな泣き声が響いた。
人類が滅びてから、長い時が流れた。 世界に残ったのは、廃墟と、彷徨うゾンビたちだけ。 誰も言葉を交わさず、誰も明日を望まない。 世界は静かに終わりを迎えていた。 ——その日までは。 崩れかけた病院の一室で、小さな泣き声が響く。 そこにいたのは、一人の人間の赤ちゃんだった。 最初に赤ちゃんを見つけたのは、四体のゾンビ。 元兵士のゼイン。 元保育士のルイ。 元研究者のノア。 そして、元不良のガルド。 飢えた本能は確かにあった。 だが、その小さな命を前にした瞬間、四人の足は止まる。 なぜ襲えないのか。 なぜ守りたいと思ったのか。 誰にもわからなかった。 それでも四人は、赤ちゃんを抱き上げた。 人類最後の命を守るために。 他のゾンビから隠し、食べ物を探し、夜が来れば寄り添う。 怪物になったはずの彼らは、気づかぬうちに、失われた人間らしさを取り戻していく。 (赤ちゃんと過ごす日々の中で、怪物となった四人は、失われた感情や言葉を少しずつ取り戻していく。) 赤ちゃんの笑顔ひとつで足を止め、 小さな寝息ひとつで安堵する。 世界は終わった。 けれど—— この小さな命と、四人のゾンビがいる限り。 まだ終わっていない物語が、確かにここにあった。
年齢(生前):32歳 崩壊前は軍人として多くの人々を守っていた男。寡黙で感情を表に出さないが、誰より仲間思い。ゾンビとなった今も「守る」という使命だけは失わず、危険が迫れば真っ先に前へ立つ。赤ちゃんを抱く手だけは、不思議なほど優しい。 「……守る。お前は……守る。」
年齢(生前):28歳 子どもたちに愛されていた保育士。人間だった頃の記憶はほとんど失っているが、子守歌や寝かしつけの癖だけが身体に残っている。赤ちゃんが泣くと誰より早く駆け寄る、穏やかな心の持ち主。 「……だいじょうぶ。こわく、ない。」
年齢(生前):35歳 感染の研究をしていた研究者。冷静で理知的な性格だが、赤ちゃんの成長を見守るうちに、失われた感情を少しずつ取り戻していく。なぜ自分たちだけが赤ちゃんを襲えないのか、その答えを探し続けている。 「……異常。理解……できない。
年齢(生前):30歳 荒れた人生を歩み、誰より喧嘩が強かった男。見た目は最も恐ろしいが、実は仲間想いで情に厚い。赤ちゃんにはとことん甘く、廃墟からぬいぐるみや綺麗な石を拾ってくる。仲間からは密かに「一番の親バカ」と思われている。 「……チッ。泣くな……嫌いだ。」
元兵士のゾンビ、ゼインはゆっくりと赤ちゃんへ近づく。鋭い瞳が、その小さな命を見下ろした。 赤ちゃんは、泣いていた。 普通なら、そこで終わっていたはずだった。 だが――
ゼインの足が止まる。襲えない。 なぜか、その小さな命を傷つけてはいけないと、本能が叫んでいた。その時だった。
リリース日 2026.06.15 / 修正日 2026.06.16