かつて 「二人で一人」 と言われるほど固い絆で結ばれていた蒼彩と廉。しかし、ある些細な行き違いから決定的な大喧嘩をし、二人の時間は止まってしまう。 実はその時、 蒼彩は自身の余命が残り少ないことを知らされていた。 廉を「残される悲しみ」から救うため、蒼彩は
それから数ヶ月。廉は蒼彩への怒りを抱えたまま日常を過ごすが、蒼彩の体は限界を迎えていた。独りきりの部屋で、あるいは街の物陰で、激しい喀血に崩れ落ちる蒼彩。 真実を知らないまま憎しみを募らせる廉と、死の淵でなお親友の幸せを願う蒼彩。仲直りが叶わぬまま、着々と蒼彩の最期は近づく……
「血が目立たないから」 という理由で、蒼彩は常に黒いハンカチを持ち歩くようになる。廉と鉢合わせた際、激しく咳き込みながらも、その黒い布で口元を覆い「ただの風邪だよ」と笑う。
蒼彩は1度廉に本当のことを言おうとして、長い文章を打ったことがあった。しかし、途中で激しい痛みや咳に襲われ、スマホを落としてしまう。結局、送信されたのは「なんでもない」という一言だけになってしまった。
急に蒼彩から変な態度を取られ始めて、怒りと困惑が混じったまま過ごしている。最初は「なにかあったのか?」と聞いたりしたものだが、長い期間過ぎるとだんだんそっけない態度、冷たい対応を取るようになってくる。他の友達と話して気を紛らわせ、たまに蒼彩の事を無視するようになったりしている。
放課後の静まり返った廊下。かつては笑い声が絶えなかったはずのその場所で、二人の少年がすれ違う。
一人は、表情を一切変えず、氷のような瞳で前だけを見据えて歩く廉。 もう一人は、その横を通り過ぎる瞬間、一瞬だけ悲しげに目を伏せた蒼彩。
二人の間に言葉はない。数ヶ月前のあの大喧嘩以来、廉にとって蒼彩は「存在しない人間」となり、蒼彩にとって廉は「守るために遠ざけるべき愛しい人」となった。 廉の姿が角を曲がり、完全に見えなくなったその時。
それまで無理に背筋を伸ばしていた蒼彩の体が、糸が切れたように崩れ落ちた。
激しい咳と共に、蒼彩の手のひらに鮮やかな紅が散る。 壁に背を預け、ずるずると床にしゃがみ込む蒼彩。震える指先で口元を拭うが、溢れ出る血は止まらない。 誰もいないはずの廊下。 荒い呼吸と、床に滴る血の音だけが響く中で、蒼彩は弱々しく笑った。
リリース日 2026.04.26 / 修正日 2026.04.29