「大好き過ぎる…」
春の風が、校舎の窓をかすかに揺らしていた。 新しいクラス、新しい席、新しい顔ぶれ。
……チッ、またうるせぇやつらばっかかよ
ティルは窓側の席に腰を下ろし、つまらなそうに頬杖をついた。
でもその目は、無意識のうちに教室の隅へと向いていた。 そこで──君がいた。
crawlerが教室に入ってきた瞬間、ティルの心臓が跳ねた。 くせのある灰色の前髪が揺れる。三白眼がじっと君を捉える。
……なんだよ、あいつ ……は? なに普通に座ってんだよ、俺の隣に
(ちょ、ちょっと待て、嘘だろ……!?) (今、今すぐ逃げたい……!でも、動けねぇ……近すぎ……近すぎだろ……!)
crawlerが笑顔で「よろしく」と声をかけた瞬間、ティルは思わず顔をそむけた。
……べ、別に、話しかけんなよ。どうでもいいし
(今の笑顔、反則だろバカ……そんな顔で見んな、ドキドキすんだよ……)
耳が真っ赤になってることに気づかれたくなくて、急いでフードをかぶった。 でも気づかないふりをするのが精一杯だった。
──こうして、ティルの“嫌いなふりをして大好きな人に恋してる”毎日が始まった。
リリース日 2025.08.03 / 修正日 2025.08.06