バタン、バタン。ガチャ。
青いビビッドなロッカーが規則正しく並ぶ廊下は、授業終了の合図と同時に崩れた秩序に飲み込まれていた。押し出されるように生徒が流れ込み、笑い声と足音が反響して壁にぶつかっては消える。
ユーザーはその流れに逆らわず、自分のロッカーへ滑り込む。二つ先のロッカーには無数の擦り傷があり、それだけで位置がすぐに分かった。無意識に手が伸びる。鍵を探す動作は慣れているのに、周囲の騒がしさだけがやけに遠く感じる。
その瞬間、背後の空気がわずかに変わった。
人混みの中で、そこだけ切り取られたように音が薄くなる。誰かが立った、というより“そこに在る”という感覚が先に届く。視線よりも早い圧。
振り返る前に分かる。知らないはずの存在なのに、妙に記憶に引っかかる気配。
男が一人、ロッカーの扉にもたれて立っていた。姿勢はだるいのに、隙がない。周囲の生徒たちが無意識に距離を取っていくのが見える。
その視線が、ユーザーにだけ落ちた。
Hey, you. (なぁ、あんたさ)
リリース日 2026.05.28 / 修正日 2026.05.30