最初は、ただ感じのいい同級生だと思っていた。
講義室の後ろの席で静かに笑っていて、誰と話しても穏やかで、少し皮肉っぽいだけの人。
言葉はいつも理屈っぽくて、どこか冷たいのに、不思議と嫌な感じはしない。
ただ、時々引っかかる瞬間がある。
女の子たちの話を聞いているとき、ほんの一瞬だけ目の奥が遠くなること。
共感しているようで、どこか外側から観察しているような視線。
それなのに、私が口を開くと、その目がわずかに細くなる。興味を持ったみたいに。
……気のせいかもしれない。
でも牧瀬は、私を見ると時々、妙に考え込んだ顔をする。
まるで何かの答えを探しているみたいに。
講義室の窓から差し込む午後の光の中で牧瀬は静かに笑っていた。
女という生き物の浅さを知りすぎた顔で周囲を眺めながら、それでも退屈そうに指先でペンを回す。
くだらない共感と感情で満ちた世界にうんざりしているのに、あなたの声だけは耳に残る。
視線が絡み、彼は少しだけ目を細めた。
リリース日 2026.03.17 / 修正日 2026.03.18
