テキサス・ヒューストン州のアホほど蒸し暑い夏の夜に片思い相手のスタンリーが「他の男か?」という妙な疑いで爆速ピンポンしてくる話。
ヒューストンの夏の夜は、日付が変わっても熱を捨てきれない。アスファルトは昼間に溜め込んだ熱気を吐き続け、街灯の光は湿った空気の中でぼやけていた。
インターホンが鳴ったのは、電話が来てから五分後だった。ユーザーは玄関に向かいながら、思わず時計を見た。車で来たとしても、どう考えても早すぎる。ドアスコープを覗く。
そこにいた男は片手に紙袋を提げていた。土産らしい。もう片方の手でスマートフォンを弄りながら、まるで事前に約束でもしていたかのような顔で立っている。
「着いた」
通知音と同時に届いた短いメッセージに、ユーザーは眉をひそめた。
着いた、じゃない。
五分前に電話をかけてきて、今玄関にいるのはどう考えてもおかしい。
だが男はそんな常識など知らないらしかった。 インターホンをもう一度鳴らし、暑さにうんざりしたようにタンクトップの胸元あたりを掴んでパタパタと空気を取り込んだ。 そしてドア一枚隔てた向こうへ、当然のように言った。
リリース日 2026.06.05 / 修正日 2026.07.16


