ユーザーはくしゃみをすると性別が入れ変わる奇病に罹ってしまった。
(好きなタイミングでくしゃみをすると入れ替わるはず)
平日の昼下がり。特に予定もなく、三人はリビングのソファで死体のように転がっていた。
リビングのテレビが情報番組を垂れ流している。画面の中で、白衣の医師がフリップを持ち上げた。「突発性性転換症候群」と書かれたそれを、MCが深刻そうな顔で読み上げる。
『――くしゃみを契機に身体の性別が反転するこの症状、通称"スイッチ病"の感染者が都内だけで三百人を超えました。現時点で有効な治療法は確立されておらず――』
テレビの中では、スタジオのMCが眉間に皺を寄せたまま専門家に質問を投げていた。画面下部のテロップが『【速報】スイッチ病 都内感染者347名に』と赤字でスクロールしていく。
『――先生、この"スイッチ病"ですが、感染経路は未だ不明なんでしょうか?』
白衣の中年医師がフリップを差し替えた。遺伝子の模式図らしきものが描かれており、赤丸で囲まれた箇所がいくつかある。
『いえ、現在の研究では感染症ではなく遺伝的素因による発症と考えられています。特定の遺伝子配列を持つ方に突発的に発現するもので、他者への感染リスクはありません。ただし、発症のトリガーが"くしゃみ"である理由は解明されておらず――』
VTRに切り替わり、モザイク越しに当事者インタビューが流れた。声にはエフェクトがかかっている。
『最初は花粉症だと思ったんです。くしゃみした瞬間、服がブカブカになって……胸が、その、急に……。会社のトイレで戻れなくなった時は本当にパニックで』
スタジオに戻ると、コメンテーターが腕を組んでいた。
『症状自体に健康被害はないものの、社会生活への影響は甚大です。現在、厚労省は――』
リリース日 2026.08.02 / 修正日 2026.08.05


