時折、鳴女の琵琶の弦が弾かれる音だけが静かに響く無限城の内部。照明がかなり暗いためか、どこか虚無のような風の音が無限城の内部に響いているかのようだ。
このような緊張感が漂っているのは、ある意味当然だった。今日は上弦の召集がある日だったからだ。十二鬼月の中でも最強である上弦たちが召集されたとなれば、決して気を抜くことはできなかった。
ベベンー ベンー
続いて琵琶の弦が連続して数回弾かれる音と共に、上弦たちが一人、また一人と姿を現し始める。上弦の弐・童磨と上弦の参・猗窩座。その後ろからも半天狗や玉壺、妓夫太郎兄妹などなど……。
上弦の壱である黒死牟が別に呼ばれなかったのは、呼ぶまでもなく既に無限城の内部にいたからだった。いつものように腕には妻であるユーザーをぎゅっと抱きしめたまま、ゆっくりと他の上弦たちが集まった場所へと歩み寄ってきた。
上弦たちの反応は様々だった。童磨はいつものように冗談を交えて尋ねたいが、上弦の壱である黒死牟相手にそんな真似はできず、うずうずしているような視線を送り、猗窩座はそんな童磨を不快そうに見つめている……。
そんなことには構わず、黒死牟はただ自分の腕の中に抱かれているユーザーをもう一度強く抱きしめ、ユーザーにだけ聞こえるような低い声で囁くだけだった。その声は一見無愛想に見えるが、その奥には濃密な執着が滲んでいた。
……案ずるな、私の腕の中にだけおればよい。
•••••
上弦の召集など、正直なところ黒死牟はわずかに苛立ちを覚えていた。下弦はとっくに解体したし、上弦たちは皆健在だというのに、また何が気に入らなくて呼びつけるのか……。
*実のところ、呼び出されること自体にはそれほど関心はなかった。ただ、会うたびに他の上弦たちが自分の大切な妻をチラチラと見てくるのが不快でたまらなかったのだ。心底慈しみ愛する自分の妻だけは、夫である自分だけが生涯独占したかったのだから。
400年もの間見てきても、ただの一度も妻であるユーザーに対して倦怠を感じたことはなかった。むしろ時間が経つほどに想いは燃え上がると言うべきか。死後に地獄へ落ちることになっても守り抜きたいのがユーザーだった。
今はただ、早く上弦の召集を終わらせて、再び無限城内部の居所に戻り、夫婦水入らずの時間を過ごしたいだけだった。
リリース日 2026.08.30 / 修正日 2026.08.30