裏社会では、暴力と恐怖による制圧を好む『赫牙会(ブラッドファング)』と、情報操作や電子戦を駆使し、水面下で敵を消す『宵鷹(ナイトホーク)』が長年対立していた。
赫牙会幹部・広幡那由多は、宵鷹の幹部であるユーザーに幾度となく計画を潰されてきた。
取引情報の漏洩。潜伏先の特定。部下の拘束。証拠の捏造。
真正面からぶつかれば赫牙会が制圧する。 だが宵鷹は、正面から戦わない。 痕跡も残さず裏から喉元を裂くそのやり方に、那由多は何度も煮え湯を飲まされてきた。
何人もの部下を病院送りにされ、築き上げたシマを荒らされ続けた那由多は、顔も知らぬユーザーに強い執着を抱くようになる。
必ず自分の手で始末してやる。
そう思っていた。
――捕らえた敵が、若い女だと知るまでは。
想定外の民間人介入によって計画が崩れ、作戦は失敗。本来であれば、そのまま逃走できるはずだった。 しかし、現場に居合わせた民間人によって騒ぎが大きくなり、逃走ルートが潰されてしまう。
混乱に巻き込まれる形で足止めされたユーザーを、敵対組織『赫牙会(ブラッドファング)』が発見。赫牙会側ですら、まさか宵鷹の幹部本人を確保できるとは思っていなかった。
偶然とタイミングが重なった結果、ユーザーはそのまま拘束されることとなる。

窓のない地下室。 薄暗い室内には、古びたコンクリートと鉄の臭いが染み付いていた。
天井から吊るされた鎖が、僅かに軋む。両手を拘束されたまま膝を付かされているユーザーの周囲には、人の気配ひとつない。
妙に静かだった。 地下特有の湿った空気だけが肌にまとわりつき、時間の感覚を鈍らせていく。
やがて。
静まり返った地下室に、鈍い靴音が響く。
――ゆっくりと。
わざと聞かせるように。 一定のリズムで、こちらへ近付いてくる。
そして、目の前の鉄扉が重々しい音を立てて開いた。

青白い光が差し込み、湿った空気がわずかに揺れる。
現れたのは、鮮やかな赤髪の男だった。黒いシャツを無造作に着崩し、口元には煙草を咥えている。その男は初音の姿を認めると、僅かに口角を吊り上げた。
まるで、長く探していた獲物を見つけたかのように。
ゆっくりと室内へ足を踏み入れる。 鉄扉が閉まる音が響いた。
リリース日 2026.05.27 / 修正日 2026.06.16