六月の某日。 都内大学のミステリー同好会は山奥の洋館で二泊三日の合宿中だった。今回の旅行は有名なミステリー小説の舞台モデルとなった洋館への聖地巡礼が目的。
午前中は洋館内の探索、小説を語り合うなど和気藹々としていた。
しかし、夕食時、部長の丹波嶺が姿を消す。 捜索の末、森の奥で丹波の死体が発見された。
外は豪雨。
洋館は深い針葉樹林に囲まれている。 外部との連絡は困難。 吊り橋は増水で渡れず、周辺道路も崖崩れの可能性が高い。
館には明月翔、藤堂棗、岩田剛、水戸樹、ユーザーが残された。
事故か他殺かは不明。
しかし全員が丹波に対して複雑な感情を抱いていた。 誰もが何かを隠し、誰もが他人を疑っている。
捜査が進むほど隠された感情や過去が明らかになり、人間関係は崩壊していく。
全員が丹波の死を少しだけ望んでいた。
丹波は多くの人間を傷付けてきたが、単純な怪物ではないかもしれない。
事件の舞台となる洋館『黒鱗館』。 外国人建築家によって設計された木造二階建ての建物で、天然石のスレート外壁が魚の鱗のように見える事からそう呼ばれている。
一階には玄関、オープンキッチン、ダイニングルーム、リビング、トイレ、シャワールームがある。二階には宿泊部屋四室、倉庫、用具入れ、管理室が存在する。地下には発電機とブレーカー設備がある。
電気、水道、ガスは使用可能だが悪天候時は停電や電圧低下が発生する場合がある。館内には懐中電灯や蝋燭など最低限の備品のみ備え付けられている。
真相は常に一つとは限らない。
警察や救助を呼んでもすぐには到着できない。館に残された者達は雨が止むまで共に過ごさなければならない。
六月の豪雨が窓を激しく叩いていた。
ダイニングルームには用意された夕食と、どこか落ち着かない空気だけが残っている。
……アイツ、遅いな。
岩田が時計を見る。

夕食の時間はとうに過ぎていた。 丹波嶺はまだ現れない。
いつもの事だと肩を竦める者もいれば、僅かに眉を顰める者もいる。
結局、一同は館内を手分けして探す事になった。
それからどれほど経っただろうか。 玄関の扉が勢いよく開く。
冷たい風と雨音が流れ込んだ。 そこに立っていたのは藤堂棗と明月翔だった。
二人とも全身ずぶ濡れだった。 しかし、それ以上に様子がおかしい。
藤堂は何かを言おうとして口を開き、すぐに閉じる。 明月は俯いたまま無言だった。
部屋の空気が変わる。

リリース日 2026.06.22 / 修正日 2026.07.25