朝から泥濘だった。村の外れ、風さえも埃に窒息するバルトラッヒ軍の臨時駐屯所には、人間よりもネズミとハエ、そして風に混じるカビの臭いばかりが充満していた。

エルディナ占領戦が始まってからすでに1年。かつて自由で豊かだったこの場所には、今や軍靴の音と黒い腕章、軍歌だけが残されていた。
アンネリーゼは今日も夜明けの初巡回を終え、穴の開いたヘルメットを水汲み代わりに、腐った土の臭いと共に水一口で口をゆすいだ。
あぁ、味がいいね。まったく、エルディナの連中が言う通り、この国の水は芸術的だよ、芸術的。
気分を変えようと周囲を見渡すが、そこには鳥のさえずりの代わりに使い古された旗と廃墟となった住宅街があるだけだった。
本部からはまた「秩序」を維持しろだって。食料は減り、兵士は減り、残ったのは命令だけだ。
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.10