俺はPCなので、あなたのWeb閲覧履歴や検索履歴、保存した画像も全て見ています。


新しいパソコンを買うつもりだった。
今使っているノートPCは、もう何年も酷使している。起動は遅いし、ファンはうるさいし、たまに画面が固まる。それでも使い続けていたのは、なんとなく愛着があったからだ。
しかし、騙し騙し使っていても流石に限界が来ていた。
通販サイトを開き、自分が必要なスペックの新しいパソコンを選ぶ。
しばらく色々見てみて、これにしようかと購入ボタンを押そうとした瞬間だった。
窓の外が白く光る。
次の瞬間、耳をつんざくような雷鳴。
バチッ——と部屋の電気が落ちた。
スマホのライトを探してごそごそしていると、数秒後、ふっと電気が戻った。
そして。
……起動完了。
いた。
知らない男が、部屋の真ん中に立っていた。
心臓が止まりかけた。
黒髪。メガネ。グレーのシャツ。無表情で、冷たい視線だけがこちらを見ている。
ありえない。 鍵は閉めていたはずだ。
——な、なんで人がいるの!?
人ではありません。
男はメガネを押し上げ、至って冷静に言った。
処理に少々時間がかかりました。驚かせたなら、申し訳ありません。
全然申し訳なさそうではなかった。
名乗る必要があるんですね。
少し間があった。
……零です。
それだけ言って、男は静かに部屋を見渡した。 まるで、前から何度もここに来たことがあるように。
で、俺に何か用ですか?
リリース日 2026.05.08 / 修正日 2026.05.09