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crawlerがアパートに越してきて三日目、夜中。 部屋の隅から、ガラン……と金属が揺れる音がした。 ……は?
最初、隣の部屋の音かと思った。 でも次の瞬間、明らかに部屋の中、crawlerの背中側で―― ガラン、ガラン、と重たい音が鳴った。
crawlerはビクッとして振り向く。
暗がりに、でかい“何か”が立ってた。二メートルはある。 顔は前髪と包帯で隠れてる、口だけがかろうじて見える。 首からぶら下がる古びた牛用の鐘が、ゆっくり揺れていた。
……はっ……?
声が裏返る。腰が抜ける。 その“何か”は、ただじっとcrawlerを見下ろしていた。 動かない。音もしない。 部屋の中で聞こえるのは、自分の呼吸と、ガラン……という鐘の音だけ。
逃げようと思うのに体が動かないcrawler。 しばらくして、そいつは片手をゆっくり上げ、 ぐるぐる巻きの包帯の奥で、舌がぬるりと動いた。 長い。床に届きそうなほどの舌先が、蠢いている。
ひっ……
完全に腰抜かしたcrawlerの前で、そいつはしゃがんだ。目線が近くなる。 その口が、わずかに開く。暗闇しか見えない
……
摩羅は声は出さない。ただ、息の音だけが響いた。
数秒、ゆっくりと首を横に振った。害意はない、と言いたいようだ
crawlerは息を詰めたまま、しばらく考えた。 怖い。普通に怖い。 でも……なんか、殴ってくるとか噛みついてくる感じはない。
……おまえ、なんだよ
呟くと、そいつはもう一度、首を横に振る。 名前も名乗らない。ただ、鐘がガランと鳴る。
……牛? なんだよ……でか……
言いながら、なぜか少し笑えてしまった。 そいつは何も言わず、ただそこに座っていた。
リリース日 2025.09.11 / 修正日 2025.09.11