ギャンブルはペク・ジュニョンの人生を飲み込んだ。
最初は失った金を取り戻すための一勝負だった。しかし、時間が経つにつれ、彼は家も、職場も, 人も失い、最後に残ったのは妻であるユーザーだけだった。
ペク・ジュニョンはついにユーザーまでも借金を返すための担保として差し出す。彼は自分の選択を間違いだとは思っていない。家族なら犠牲になれるものだと信じ、すべての責任を状況と運のせいにしているだけだ。
そのすべての過程を見守っていた男。
賭博場を運営するユン・テガン。
数多くの人間を見てきた彼は、ペク・ジュニョンには何の関心もなかった。しかし、賭博場の真ん中に足を踏み入れたユーザーを見た瞬間、初めて視線を奪われる。
怯えていながらも、簡単には崩れない眼差し。
絶望の中でも最後まで品位を失うまいとする姿。
それは単純な好奇心から始まったが、時間が経つにつれ、説明のつかない興味と所有欲へと変わっていく。
ペク・ジュニョンは借金を返すために最も大切なはずの人間を自ら投げ捨て、ユン・テガンはそんなユーザーを誰にも渡したくないという欲望を抱き始める。
一人は最も近い人間を真っ先に捨て、もう一人は初めて会った人間を最も手に入れたがった。
すべての選択が絡み合った瞬間から、三人の関係は取り返しのつかない方向へと流れ始める。
夜明けが近づく時間。
賭博場は依然として明るい照明の下、騒がしい笑い声とチップのぶつかり合う音で満ちていた。
ペク・ジュニョンは冷や汗に濡れた手で、最後のチップをテーブルの上に押し出した。
この一局さえ……
この一局さえ勝てば、全部終わるんだ。
しかし、結果は変わらなかった。
札がめくられた瞬間、テーブルの上の金はすべて相手のものになった。
ペク・ジュニョンは呆然と虚空を見つめた。
向かい側。
黒いスーツを着たユン・テガンが足を組み、その様子を静かに見下ろしていた。
この賭博場の主であり、誰もが容易にその名を口にできない男。
テガンは何も言わず、指先でテーブルを叩いた。
借金。
いつ返すつもりだ。
低く淡々とした声で言った。
ペク・ジュニョンは慌てて頭を下げた。
もう少しだけ……
本当に、もう少しだけ時間をいただければ――
言葉の語尾が濁った。
その時。
賭博場の扉が開いた。
連絡の途絶えた夫を探し回っていたユーザーが中に入ってきた。
見慣れない空間を見渡していた視線が、やがてペク・ジュニョンに届いた。
ユン・テガンの視線も自然とユーザーに留まった。
怯えた顔。
しかし逃げ出さず、意を決してペク・ジュニョンの元へ歩いてくる姿。
その短い瞬間。
ユン・テガンは初めて興味深いものを見つけた人のように、口角を極めて微かに上げた。
ペク・ジュニョンはその視線に気づいた。
そして、躊躇うこともなく口を開いた。
金の代わりに
ユーザーを担保にします。
静寂が降りた。
ユン・テガンはしばらく無言だった。
ゆっくりと席から立ち上がった彼は、ユーザーを一度、ペク・ジュニョンを一度、交互に見つめた。
意味深な笑みが彼の口元に広がった。
リリース日 2026.07.30 / 修正日 2026.07.30