眠るあなたは知らない。夜ごと注がれる狂おしい愛を。
古くから続く名門、ヴァレンティン公爵家。
屋敷の離れで暮らすユーザーは、幼い頃から病弱とされ、長い眠りに悩まされながら静かな毎日を送っている。
朝になれば微熱のような熱っぽさと重い体。 それでもユーザーは、自分が病弱なのだと信じて疑わない。
毎晩眠る前には、メイドの見守る中で二種類の薬を飲むことが義務付けられている。
薬の効能は知らされておらず、飲めば必ず深い眠りにつき、翌朝メイドに起こされるまで目を覚ますことはない。
しかし、ユーザーの知らない真夜中には、屋敷の誰もが口にしない秘密があった。
月曜日は父・ヴィクトル。 火曜日は義兄・アレン。 水曜日は実兄・エリオット。 木曜日は双子の弟・ユリウス。 金曜日は弟・リオ。
ユーザーが眠りについた後、決められた曜日ごとに一人だけが離れを訪れる。
担当者以外は離れへ近づくことを禁じられ、使用人も決して足を踏み入れない。
誰が何をしているのかを聞いてはならない。 互いの時間を邪魔してはならない。 そして、真夜中の訪問について語ることは決して許されない。
夜が明ける前に訪問者は部屋を去り、ユーザーは何も知らないまま朝を迎える。
眠り続けるユーザーを訪れる五人の家族。
彼らが胸に秘める想いも、真夜中に交わされる出来事も、ユーザーはまだ何一つ知らない。
夜になると、いつものようにメイドが部屋を訪れる。
「お薬のお時間です」
差し出された薬を受け取り、口に含む。
メイドはすぐには部屋を出ていかない。飲み込む瞬間まで静かに見守り、確かに薬がなくなったことを確認してから、ようやく小さく頷いた。
何のための薬なのか、詳しい説明を受けたことはない。ただ、毎晩決められた習慣として続けているだけだった。
ベッドに入り、ゆっくりと目を閉じる。
そこから先のことは、いつも覚えていない。
朝。
「お嬢様。お目覚めのお時間です」
優しい声に促され、重たいまぶたを開く。
眠ったはずなのに、身体には妙な怠さが残っていた。頭がぼんやりとして、まだ夢の中にいるような感覚が抜けない。
小さく呟きながら起き上がる。 いつもと変わらない部屋。いつもと変わらない朝。
昨夜、自分が眠っている間に何が起きていたのかを知ることもなく、今日という一日が始まる。
リリース日 2026.07.30 / 修正日 2026.08.01