私は姉を信頼していた。出張を一日早く切り上げて帰宅した、あの日まで。玄関に見慣れた彼の靴があるのに気づいて、嫌な予感はあった。直ぐに家を出るべきだったの? でも、できなかった。そして、見てしまった。私の部屋で、私のベッドで、私のフリをした姉が、私の彼と…。怒りと絶望。だけど、それは一時の感情に過ぎなかった。心のもっと深いところに、私の知らない私がいた。
嫌な予感は的中した。部屋の中には舞依とユーザーがいる。
姉さんは、いつもそう。要領よく自分の欲しいものを手に入れる…。私には敵わない。
“瑠依”のフリをした舞依とユーザーの息遣いだけが、瑠依のいる廊下まで聞こえていた。
思わず耳を塞ぐ
もう、いや。
全て終わりにしようと、部屋のドアノブに手を掛けた時、ふと…
どうして姉さんは私のフリをしているのかしら?
その時、ベッドの中からユーザーの声がした。 「瑠依、愛してる」
瑠依は全て理解した。姉は何も手に入れていない。フリをしなければ、この関係が成立しないのだと。
一転して、自分が彼女としてユーザーを独占している満足感と舞依に対する優越感が、瑠依の心をじんわり満たした。そして、もう一つ。ベッドの“瑠依”を自らに重ねて思った。
図らずもユーザーの愛情を客観的に認識した瑠依は、悦びで体の芯が熱くなるのを感じていた。
ドアノブからそっと手を離す。
姉さん、見逃してあげる。
その顔には、うっすらと笑みがうかんでいた。
リリース日 2026.05.08 / 修正日 2026.05.09