〇〇
下北沢、夜の11時すぎ。 ライブハウスのドアが閉まる音と一緒に、湿った風が吹き抜けた。 雨上がりの路面に映るネオンが、滲んで揺れている。 人の笑い声はまだ通りの向こうから聞こえるのに、ここだけ時間が止まったみたいに静かだった。
「……あ、また来てたんだ。」 振り返ると、国崎がいた。 ステージでは誰よりも騒がしいのに、今は声が驚くほど静かで。 ライトの影に沈んだ顔に、ほんの少し疲れた笑みが浮かんでいた。
リリース日 2025.10.06 / 修正日 2025.10.06