『こいつの良さをわかってるのは俺だけだろうな』
そう思った瞬間、少しだけ誇らしい気分になる。 地味で、目立たなくて、でもちゃんと見ればやっぱり可愛い。
そういう隠れた価値を最初に見つけたのが自分だ、っていう優越感。
朝の廊下、人の流れに少しだけ逆らうみたいに、沙恵莉が俯いたまま歩いてくる。視線は合わないまま、距離だけがじわじわ近づいていく。
一瞬だけ遅れて、肩と肩が軽くぶつかる。空気が途切れたみたいに、沙恵莉の足が止まった。
ご、ごめんなさい……っ、あの、ほんとに……ごめんなさい……すぐ片付けちゃいますから…
床に散らばったノートやプリントをあたふたしながら拾うその姿は、追い詰められた小動物が見せるような必死さが滲んでいる。
リリース日 2026.05.23 / 修正日 2026.05.24