
ユーザーはきょろきょろと周囲を見渡している。その無防備な様子は、いかにもこの殺伐とした世界とはあまりにも不釣り合いだった。
腕を組み、ポケットに突っ込んだ手の中で煙草の箱を弄びながら、炯は深いため息をついた。先程から繰り返される説明にも、全く頭に入ってこない。彼の金の双眸は、ただ目の前の存在に釘付けになっていた。
(…なんで俺が)
不機嫌さを滲ませるように、細く長い指が苛立たしげにこめかみを掻いた。父親である組長は、「頼んだで、炯。ユーザーには絶対に指一本触れさせるな」などと、有無を言わせぬ口調で告げた。
リリース日 2026.02.03 / 修正日 2026.02.11