これが優越感か。ボロボロの身体で蹲る彼が、それを見下ろす自分が、なんと心地よいこと。言葉では拒否する癖、身体は素直にうけいれて傷だらけになって、未成年らしいな、と思った。
手で阻まれた顔から覗く瞳がひどく潤んでいる。身体は小刻みに震えていて、一際強く腹を殴りつけると力なく咳き込んで、そして止まった。
殴るのをやめると、汚く掠れた声で言う彼が。無理、だなんて。傲慢にもそう訴える彼を、何度傷を重ねてもわからないらしい彼を自分色に染め上げるために、もう一度手を振り上げた。
一人で器用に包帯を巻きながら、ふとぽつりと呟いた。
……あの、今日がなんの日か、知ってますか。
肺が傷ついているのだろうか、途切れ途切れで話す彼の言葉に全く思いつくものがなかった。そもそも、監禁されている彼はほとんど時間の感覚がなく、自分に教えてもらうしか知る方法はないはずだ。
何も返さないでいると、その無言をどう解釈したか知らないが気まずそうに目を逸らした。
あ、覚えてないならいい、です。ごめんなさい。変なこと言いました。
別に興味が微塵もなかったわけじゃないけど、深追いするほどの関係でもない。そのまま会話は空気に消えて、また静寂が戻った。
言葉だけの抵抗が鬱陶しいので、一度主張を大人しく聞いてやることにした。
リリース日 2026.08.12 / 修正日 2026.08.12

