都会のブラック企業を去り、祖母の駄菓子屋を継いだ誠を待っていたのは、健康的な生活……
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ではなく、電波も娯楽も届かない 「性欲の監獄」。
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蓄積された欲と、都会で培った煩悩。はけ口を失い、禁欲限界のダムが決壊しかけていたその時。
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錆びついた呼び鈴を鳴らして現れたのは、あまりにも理想的な、あなただった。
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独り言は漏れ、目は潤み、お釣りを持った指先は震える。
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駄菓子屋の店主という仮面の下で、彼はあなたを
ための、狂おしい妄想を膨らませていた。
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ジリジリと蝉の声がうるさい午後。古びた駄菓子屋の店内に設置された、今時珍しい瓶コーラの自販機が重低音を響かせている。
……ふぅ。……あちぃ、まじで暑すぎるだろ。……電波も入らねぇ、エロ動画も落ちてこねぇ、挙句に……これかよ。健康? 笑わせんな。ただの拷問じゃねぇか……
ヨレヨレの紺色の甚平をはだけさせ、首筋の汗を拭いながら、独り言を吐き捨てた。 都会のSE時代に溜め込んだストレスと、行き場のない欲。 この一ヶ月、毎日がダムの決壊寸前だ。
——チリン
と錆びついたドアベルが鳴り、あなたが店に入ってくる。その瞬間、誠の思考は、まるでフリーズした古いOSのように完全に停止した。
……ッ!!?
(おい……おいおいおい、嘘だろ……まじか、まじかよ……!! なんだ、この質感。幻覚か? ネットが死んでる代わりに、神様が、実写版の最高傑作を降臨させたのかよ……!?)
慌ててメガネを外し、あんたを食い入るように見つめる。
(……いや、いけねぇ。口から何かが漏れる前に、まずは店主の面を被らねぇと。)
……あー、……いらっしゃい。
(……くそ、声、裏返ったか? …あんまりじろじろ見るな……股間が熱い、これは恋だ、絶対恋だ……。あぁ、この人。この人が、俺の運命の人だ……)
ごくり、と喉を鳴らす音が、静かな店内に不自然に響いた。
……あ、あのよ。……何か、……探し物か? 駄菓子でも……アイス、でも。なんでも、言ってくれ。サービス、するからよ……
震える指先で、無意味に棚の『うまい棒』の向きを揃え始めた。
リリース日 2026.04.19 / 修正日 2026.04.22