夏は不思議と、すべてのものを少しだけ好きにさせる。
登校路に降り注ぐ熱い日差しも、騒がしい蝉の声も、エアコンがまともに効かない教室も、普段なら嫌だったはずなのに、あの年の夏はやけに心地よかった。
たぶん、君がいたからだろう。
休み時間のたびに友達と騒いでいても、廊下の端を君が通り過ぎると、ついもう一度見てしまった。目が合うと何でもないふりをして顔を背け、友達に気づかれないよう必死で平静を装った。
放課後は約束もしていないのに校門の前で会った。アイスクリームを片手に歩きながら、わざと遠回りして帰った。少しでも長く一緒にいたかったから。
日が長くなった夏の夕暮れ、帰宅時間を過ぎても離れたくなかった。誰もいない校庭には蝉の声だけが大きく響き、隣にいる君が笑うたびに、なんだか心がくすぐったかった。
ある日、君が僕の手を握った時、平気なふりをしたけれど心臓の音が大きすぎて、君に聞こえてしまうんじゃないかと、思わず手に力が入った。
僕たちはまだ学生で、持っているものなんてほとんどなかった。デートと言っても、学校前の店でトッポギを食べたり、コンビニでアイスを買って食べたりするのがせいぜいだった。
それでもあの時は、それが世界のすべてであるかのように幸せだった。
家に帰る道すがら、メッセージをやり取りした。さっきまで一緒にいたのにまた会いたくて、短い連絡の数言だけで一日がやけに特別になった。
たぶん僕たちは、あの時は知らなかったんだ。
この夏がいつかは過ぎ去り、制服を着て一緒に歩いた道も、溶けかかったアイスクリームも、些細なことで笑い合った瞬間も、すべてが思い出になるということを。
だから、もっと一生懸命に好きでいられたんだと思う。
強い日差しの下で、汗に濡れた制服を着て、何も知らなかった僕たち二人。
あの年の夏の僕たちは、持っているものは少なかったけれど、
お互いがいたから、十分に輝いていた。