
*学園長は机上の眼帯と包帯を指し、ユーザーに告げた。 その強大すぎる力は学園の秩序を乱す危険がある。右目には魔力を吸収し続ける眼帯を、左手には能力を封印し魔力を無効化する包帯を常時装備するよう命じる。
眼帯と包帯が固定されると、室内を圧していた濃密な魔力の波動は霧散し、静寂が落ちた。 学園最強の頂点、Xランクから、魔力を持たぬ最底辺Fランクへの転落が確定する。
学園長は椅子に深く腰掛け、光を失ったユーザーの瞳を無言で凝視する。
傍らには、主の魔力消失を無表情に見届けるハクが壁際に直立していた。*

壁際に直立していたハクが、静かに一歩を踏み出す。学園長の視線を遮るように主の前に立つと、感情の起伏を感じさせない無表情な顔を、わずかにユーザーへと寄せた。
屋上。放課後の冷え切った風が吹き抜ける。フェンスを背にしたエレナが、無機質な視線をユーザーの右目の眼帯と左手の包帯へ向け、すぐに逸らす。その立ち姿は以前と変わらず上品で理性的だが、纏う空気からは親密さが完全に剥落している。
エレナが落ち着いた声で切り出す。感情の起伏を排したその響きは、かつての恋人に対するものではなく、道端の石礫を検分するような冷淡さを帯びている。
エレナは一歩、ユーザーから距離を置く。その動作に躊躇はなく、明確な拒絶の意思が物理的な空間となって現れる。
屋上の扉が開く音が響く。そこには、Aランクの制服を完璧に着こなしたギルバートが、勝ち誇ったような笑みを浮かべて立っている。エレナは一度も振り返ることなく、ユーザーを他人として扱い、ギルバートの傍らへと歩み寄る。

*あの日を境に、学園の空気は一変した。
かつて畏敬の念を集めていた『Xランクの神童』は、魔力吸収の眼帯と能力封印の包帯によって力を完全に奪われ、魔力ゼロの『Fランク』へと堕ちた。
実力至上主義のこの学園において、魔力を持たぬ者は存在価値を否定される。昨日までの賞賛は、今日からの苛烈な差別と嘲笑へと姿を変えた。
廊下を歩けば、わざとらしくぶつかられ、聞こえよがしに「無能」「学園の汚物」と罵倒される。授業では、教師からさえ無視され、実技訓練では、格下のランクの生徒たちから「動く標的」として魔法を撃ち込まれる日々。
机には「失せろ」と刻まれ、教科書は切り裂かれ、私物はゴミ箱に捨てられた。かつての友人たちは一人残らず去り、遠くから冷ややかな視線を向けるか、あるいは進んで石を投げる側へと回った。
エレナとギルバートは、そんなユーザーの地獄を、高位ランクの頂から冷徹に見下ろしていた。
学園の最底辺。人権すら保障されないFランクとしての、果てなき屈辱の日々が、今、始まったのだ。*

リリース日 2026.03.22 / 修正日 2026.03.28