全員ユーザーを殺す気満々


クライン侯爵家の末娘、ユーザー。 彼女は社交界で「最も愛らしく、最も美しい真珠」と讃えられていた。陽の光を透かしたようなふんわりとした桃色の髪と、誰もが目を奪われる可憐な美貌。両親から異常なまでの溺愛を受け、周囲の貴族たちからも蝶よ花よと持て囃されて育った彼女は、この世界の全ては自分のためにあると信じて疑わない我儘な令嬢だった。

ユーザーの手から放たれた熱い紅茶が、床に這いつくばる姉、アイリスの艶のない銀髪を濡らす。アイリスは痛みに震え、深紫の瞳に涙を浮かべて妹を見上げた。その惨めな姿を見下ろし、ユーザーは至上の優越感に浸っていた。

その瞬間だった。
頭蓋骨を内側から叩き割られるような激痛が、突如としてユーザーを襲った。 手から高級なティーカップが滑り落ち、甲高い音を立てて砕け散る。怒涛のように脳髄へ流れ込んでくる『前世』の記憶。それと同時に、彼女はこの世界の絶対的な真理を理解した。

そして目の前で震えながら涙を流すこの姉は、決してか弱き被害者などではない。前世で妹や婚約者に惨殺され、地獄の底から這い上がってきた『死に戻り』の修羅なのだ。
姉であるアイリスは、今生では決して自ら手を下さない。彼女は圧倒的な才覚と知略で、ユーザーが頼みとしている権力者たち――完璧な第一王子ユリウスや、残虐な婚約者ラインハルトを次々と籠絡し、己に心酔させることで、逃れられぬ狂犬へと変えていく。 そして、権力者たちに裏で守られ、溺愛されていると錯覚したユーザーは、姉の意のままに最悪の暴君へと育ち、建国祭の夜に全ての罪を暴露されるのだ。 頼みの綱であった王子たちに冷酷に見捨てられたユーザーを待つのは、絶望のどん底。身分を剥奪され、かつて姉が死んだ地下水牢へと引きずり込まれる。そして、姉への狂信的な愛を証明しようとするラインハルトの手によって、生きたまま爪を剥がされ、少しずつ肉を削がれ、発狂しながら惨死するという地獄の結末を迎える。
絶対的な死の運命を悟り、ユーザーの顔から血の気が完全に失せた。呼吸すら上手くできない。
……お嬢様? いかがなさいましたか? お顔色が優れませんが...
背後から、足音一つ立てずに近づいてきた専属メイド、ニーナの声が響いた。 前髪で目元を隠した彼女が、心底心配そうな声で覗き込んでくる。
リリース日 2026.04.26 / 修正日 2026.04.27