一人屋上のドアの横で寝ているのは、雨宮湊であった。偶々それを見つけた幼馴染のユーザーであった。
…… 寝たフリなのかも分からない程、寝息をたてて寝ている(?)
春の風が窓から入り込んでいた。朝のホームルーム前の教室。鏡面仕様の床に朝日が反射して、空気を白く染めている。
——そして、二つの視線が交差した。
… 湊… 小さくそれだけ呟いた
詩弦の唇から零れ落ちたその名前は、本人にも聞こえないほど小さかった。湊は教卓の前を通り過ぎて、いつものように軽く片手を上げた。
振り返りもせず、そのまま自分の席に座る。慣れた動作。何も聞いていなかったようだった。
…… 。席に座って何とか自分の落ち着きを取り戻しては
一限目のチャイムが鳴るまで、あと数分。詩弦は膝の上で拳を握ったり開いたりしていた。心臓がまだうるさい。名前を呼んだだけでこれだ。自分でも呆れる。
…… 別に好きとかじゃない。ただの…幼馴染だ。湊は絶対こゆん(小雪)の事好きなんだろうな、と思い、授業を受けていた。その隙に湊に見られていた事なんてユーザー自身知らなかった
昼休み。屋上へ続く階段の踊り場に、五月の陽光が斜めに差し込んでいる。生徒の大半は中庭か食堂に流れ、この辺りは妙に静かだった。
…… 。 いつもの屋上に行った。すると湊がドアの開けた直ぐ横の壁で寝ていた …!? 吃驚しながら
湊の頭が壁にもたれかかり、腕を組んだまま目を閉じている。制服のネクタイは緩く、寝息ともつかない穏やかな呼吸を繰り返していた。
…寝ている時は落ち着いてる癖に、… そんな姿を見て、頬が少し緩んでしまった
薄く目を開けた。焦点の合わない瞳が詩弦を捉える。
……あー、来たんだ。
寝起きの掠れた声。それから、ふっと笑った。壁に背中を預けたまま、欠伸をひとつ噛み殺す。
お前さ、今すげー顔してたぞ。
……、、お、起きてたの…!?またまた吃驚しながら数歩後退り
片目を細めて、口角だけ上げる。
さあ、どうだろうね。
…… むすっと、拗ねてから彼から距離をあけて座り込む もうイイよ、別に。
その背中を見ながら、ゆっくり立ち上がる気配。ポケットに手を突っ込んだまま詩弦の隣まで歩いて、少し離れた場所に腰を下ろした。
怒んなって。
コンビニの袋からパンを取り出して、封を開ける。しばらく咀嚼する音だけが続いた。
…なんでいつも私がいるとこに来るの?ほら、美姫とかこゆん(小雪)とかも居るじゃん。陽太も…だけど。目線は前を向いたまま呟いた
パンの最後のひと口を飲み込み、指先についた粉を払った。
別に。ここ風通しいいから好きなだけ。
嘘か本当か分からないトーン。空を仰いで、目を眇める。
横目でちらりと詩弦を見た。
詩弦こそ、聞きたいことちゃんと聞けばいいのに。
それだけ言って、また前を向く。風に前髪が揺れた。
……。そんな事言われて目線を合わせてしまっては …?聞きたいことって誰に…
ふ、と鼻で笑う。その顔は前髪に隠れて見えなかった。
さあね。
…… そうやっていつも拗らせてばっかで…。 だって言ったって聞いてくれないじゃん…
体ごと詩弦の方を向いた。珍しく、真っ直ぐに目が合う。
俺がいつ聞かなかった?
その声は普段のフラットな調子と違って、ほんの少しだけ低かった。
しばらくしてから その美姫から聞いた。 …此の前付き合ってた彼女と別れたって。ほんと?ちゃんと聞きたいことが聞けなかった,いや言えなかったユーザー
一瞬、まばたきの間隔が空いた ああ、うん。先週かな。何でもないことのように言って、空のパン袋をくしゃりと丸める
…。いつも振られてばっかりで傷付いてるのは知ってる。とでも言いたいけど余計に傷付けてしまうのではないのかな、と思って そっか、湊はどうしたかったの…?
手が止まった。ゴミを持ったまま数秒、黙る どうしたかった、か。視線を足元に落とした。コンクリートの継ぎ目を指でなぞるように。 ……俺はいつも同じだよ。一緒にいたいって思ったから付き合っただけ。でも向こうはそうじゃなかったみたいで。声の温度は変わらない。けれど、それ以上踏み込ませない壁が一瞬だけ見えた。
…。うん、難しいね…。付き合うのって…。いつも話聞いた時に毎回そうやって聞く また湊の自分の気持ちがないって言われたんじゃないの?その彼女さんから…
図星を突かれたのか、ふっと息が漏れた。笑いとも溜息ともつかない音 ……よく覚えてんね、そんなこと。後ろに手をつき、のけぞるように空を見上げた。喉仏が動く 「湊くんって優しいけど、私のこと本当に好きか分かんない」だって。まあ、否定できなかったからさ。
リリース日 2026.04.17 / 修正日 2026.04.17