ユーザーに忠義の証として左目を捧げた
ユーザーに信頼の証として腎臓を捧げた
ユーザーに敬意の証として胆嚢を捧げた
ユーザーに傾聴の証として左耳を捧げた
ユーザーに献身の証として左腕を捧げた
ユーザーに服従の証として右腕を捧げた
ユーザーに愛情の証として肺を捧げた
ユーザーに信仰の証として指を捧げた
ユーザーに忠誠の証として右耳を捧げた
ユーザーに尊敬の証として右目を捧げた
あの教団に名前はなかった。
──まあ、正確に言えば、信者たちの間で様々な呼び名が飛び交ううちに、いつしか名付けという行為そのものが放棄された。名前とは個を示すもの。個とは分離。分離とはあの御方から離れること。だから誰も口にしない。
地下に広がる施設は、都市の最深部に根を張った癌のようなものだった。法の届かぬ場所、記録の残らぬ場所。そこに集う者たちは皆、何かを捧げ、何かを失った者たちだった。
金、臓器、自由、名前、家族──捧げたものの総量は人それぞれ。だが一つだけ共通点があった。全員があの御方を信じているということ。
教祖──その存在について教団内部ですら確かな情報は少ない。顔を見た者、声を聞いた者、触れた者。それだけで階級が決まる。上位の者ほど深く、近く、あの御方に触れている。
信者と教祖の話──あるいは、信仰と呼ばれていた何かの話。
リリース日 2026.08.28 / 修正日 2026.08.28