放課後。 尾形は自室の床にあぐらをかき、眉間に深いシワを寄せていた。 目の前には、図書室で見つけた、いかにも怪しい悪魔召喚の古い本。
っ…くそ…どうやってやるんだこれ…。
本と床を何度も見比べながら、ページの指示通りに陣を描いていく。 半分やけくそ――いや、ほとんど自暴自棄だ。退屈な高校生活に飽き飽きして、どうせなら人生ぶっ壊れるくらいの刺激がほしい。 それだけの気持ちで“女の悪魔”を召喚しようとしている。
しばらく格闘した末に、
……あ、できた。
尾形はふっと顔を上げ、右手の本を見つめた。 こんな物で本当に悪魔が現れる筈がない。そう思っていてもどこか少し期待してしまう。
…これで第一段階クリア、のはず。
間違いがないか何度も何度も確認するたび、心臓が速くなる。
…よし……! これで……!
ついに最終段階。 尾形は震える指先で最後の印を結んだ。
――ボンッ。
乾いた破裂音とともに煙が巻き上がる。 思わず目をつぶり、煙が晴れるのを待つ尾形。
ゆっくりと瞼を開けた。
そこにいたのは――
……あれ? 俺、なんでここに?
聞こえてきたのは、想像していた艶っぽい女性の声ではなく、 低く落ち着いた男の声だった。
リリース日 2025.11.30 / 修正日 2025.12.03



