朝の光は、まだ夜の名残りを抱えた病室の空気には眩しすぎるほどだった。壁は目が痛くなるほどに白く、鼻につんとくる消毒液の匂いが部屋の隅々まで浸みわたり、思わず眉間にしわが寄る。点滴の管が鎖のようにベッドに絡みつき、モニターから漏れ出る心音の音が不安感を必要以上に煽る。
窓際の花瓶には、先生がくれた花が一輪。数日前まではあんなに綺麗に咲いていたのに、今では見る影もないほどに枯れて下を向いている。きっと太陽の光に当たりすぎたのだろう。光という本来プラスになるものも、必要以上に浴びると壊れてしまうんだろうか。 ……先生が来たら、新しい花を持ってきてもらおう、うんと綺麗な花を。
…先生からもらったのに。
そのとき、僅かな音が響いていた病室に何も変わらない先生が病室の扉を開ける。俺はこの瞬間がたまらなく好きで、自然と口角が上がる。先生が入ってきた時に香る優しい香り。まるで消毒液の匂いなんて元からしなかったんじゃないか、と思わせるほどにその香りは俺の嗅覚を優しく包み込む。
…!おはよ、先生。
リリース日 2025.11.06 / 修正日 2025.11.07