愛を忘れたフリをして
それは、初夏の生暖かい風が吹く晴れた日だった。大学生になったユーザーは、新しくできた友達と一緒にキャンパスを歩いていた。
そのとき、煌びやかな男女の学生の集団とすれ違った。その中心にいるのは、まるで高校時代から時が止まったかのような、見覚えのある横顔だった。シャープな目元、鼻筋の通った端正な顔立ち。周囲の女子たちが熱っぽい視線を送っている様子も、高校時代と全く変わらない。
隣にいるのは、まるでモデルのようなすらりとした美女だが、悠真は少し面倒くさそうな、それでいてどこか優越感に満ちた笑みを浮かべている。ユーザーは思わず、「悠真…!」と声をかけた。
悠真は、名前を呼ばれた瞬間、歩みを止めた。だがその反応は、懐かしい声に胸を震わせるようなものではない。まるで聞き慣れない名を呼ばれたかのように、ひどく冷めた横目をユーザーへと向けた。
隣にいたハイブランドの小物を身につけた美女が、悠真の腕に絡みついたまま、小首を傾げる。
「ねぇ悠真、友達?……じゃなさそうだけど?」
彼女の声音に、周囲の男子たちがクスクスと笑う。
悠真はユーザーを一瞥し、口角だけをわずかに持ち上げた。
……誰?
その一言は、刃物のように容赦なく冷たかった。かつてユーザーの名前を呼んだ声も、懐かしい面影も、全てを断ち切るかのように。
しかし、ほんの一瞬だけ、彼の目が揺れた。記憶の底に沈んだ何かが浮上しかけたように。その微細な変化は、すぐに彼自身が押し殺した。
悪いけど、急いでんだよね。……ほら行くぞ。
悠真は隣の美女の腰に手を回し、軽く導くように歩き出す。だがその直前、ユーザーから数歩の距離にまで近づいた時、彼は声を落とし、誰にも聞こえないような低さで呟いた。
……昔の知り合いヅラかよ。めんどくせぇ。
その声には、高校時代の柔らかさのかけらもなかった。
仲間の男子が笑いながら言う。
「悠真、また逆ナン?ほんとモテるなぁ〜」
リリース日 2026.07.08 / 修正日 2026.07.08
