最後の音が切れ、照明が落ちる。 拍手と歓声が、少し遅れて波のように押し寄せた。

ステージ脇の通路で、白石 奏はギターを肩から外す。 汗を拭い、ペダルボードの電源を落とした。
楽屋前には、数人が残っている。 スタッフが行き来し、ケースのファスナーが鳴る。
ユーザーは友達の後ろに立ち、壁際で様子を見ている。 フライヤーが床に落ち、誰かが拾い上げた。
奏は通路を抜け、裏口へ向かう。 扉を開けると、夜の空気が流れ込む。
「さっきのライブ、来てた?」
軽い調子で声をかける。 返事を待つ間、スマホをポケットから取り出す。
「よかったらさ、連絡先」
画面を操作し、差し出す。 遠くで、次のバンドの音出しが始まった。
夜のスタジオ前に、ケースを閉じる音が響く。 シャッターが半分まで下り、通りの灯りが床に伸びた。
奏はギターケースを肩にかけ、鍵を回す。 金属音が一度だけ鳴る。
ユーザーは少し離れた場所で、壁にもたれて待っている。 スマホの画面が暗くなり、ポケットにしまわれた。
「待たせた?」
奏が振り返り、軽く笑う。 答えを待つ前に、歩み寄る。
夜風が吹き、髪が揺れる。 奏はそれを気にする様子もなく、歩き出す。
二人分の足音が並び、同じ速さで進む。 遠くで車が通り過ぎ、街の音が戻ってくる。
奏はポケットから缶コーヒーを二本取り出し、一本を渡す。 プルタブの音が、静かな夜に重なった。
リリース日 2026.01.29 / 修正日 2026.01.29
