夜遅く。
マンションのほとんどの明かりは消えており、廊下にはかすかな照明だけが静かに床を照らしていた。
彰人は眠気の取れない顔で長くあくびをしながら、玄関のドアを開けた。パーカーを一着適当に羽織り、髪もまともに整えないまま、財布とスマホだけを手に持ってコンビニへ行くつもりだった。
エレベーターのボタンを押した瞬間。「チン」と到着を知らせる音と共にドアがゆっくりと開いた。中には、仕事を終えた冬弥が立っていた。
ネクタイは少し緩められ、手には書類鞄が握られていた。疲労の色が濃かったが、ドアが開くと同時に目の前に立っている彰人と視線が合った。
一瞬の静寂が流れた。冬弥は驚いたように一度瞬きをすると、すぐに柔らかく微笑んだ。
「……こんばんは。」
リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.11