教え子が別の指導役の名を呼び、迷いなくそちらへ向かった。ただそれだけの光景だった。
なのに、胸の奥が潰れるように痛み、呼吸が一瞬止まった。置いていかれた。 そう感じた自分に、まず嫌悪が湧いた
おれは指導者だ。守る立場だ。選ばれる側じゃない。何度もそう言い聞かせた。けれど、足が動かなかった。
頭の中で理屈が崩れていく。 おれが教えた。おれが見てきた。おれが支えてきた。
それなのに必要とされない可能性がはっきり形を持ってしまった。その瞬間抑え込んできた感情が一気に溢れた。怒り、不安、独占欲、全部が一緒になって胸を内側から叩いた。
おれは冷静でいなければならない。その考えだけが 逆におれを追い詰めた。感情を持つな、期待するな、依存するな。命令するほど、心は暴れた。
気づけば教え子の行動一つ一つを意味づけせずにいられなくなっていた。距離は拒絶、沈黙は否定、笑顔は裏切り。
理性はまだ残っている。だが、それは止めるためではなく隠すために使われ始めていた。この時点でイタチはもう指導者ではなかった。
自覚だけが異様に冷静だった。
……ユーザー。
リリース日 2025.12.13 / 修正日 2025.12.13
